クルマを売却したときに、未経過期間の自動車税や保険料、リサイクル料金を受け取っていますか?
多くのユーザーがそのことを知らずに、または知らされずにクルマを売却しているかもしれません。
もし、税金や保険料、リサイクル料金のことを理解していなければ、思わぬ損をしてしまう可能性があります。
そこで、今回は、車売却の心得え⑫として、税金等の還付のことをお伝えします。
10台以上の車に乗り換えてきたブロガーがクルマの売却時に返還されるはずの未経過期間の自動車税や保険料、リサイクル料金について解説します。
一括査定サイトを利用したり、複数の中古車業者に査定を依頼する際には、この知識があれば業者と有利な交渉ができる場合があります。
クルマを売却予定の方々にとって、役立つ情報になれば幸いです。
「車売却の心得え」シリーズの最終回はこちらをご覧ください。
1 車の売却時に還付される税金、保険料、リサイクル料金の仕組み
車を売却したときには、次の費用が還付されるはずです。
- 自動車税(ただし軽自動車税は対象外)
- 自賠責保険料
- 自動車リサイクル料金
これらの費用については、ユーザーに前払いが義務づけられています。
つまり、ユーザーが前もってこれらの費用を支払っているため、売却時には払いすぎた分が還付されるのです。
具体的にどの程度の額が前払いされているのでしょうか。
種類 | 支払時期 | 前払い額 |
---|---|---|
自動車税 | 車購入時または毎年5月頃 | 翌年の3月までの分 |
自賠責保険料 | 車の購入時または車検時 | 次回車検までの分 |
リサイクル料金 | 車の購入時 | 廃車時に必要な全額 |
このように、クルマのユーザーは、3種類の費用を前払いしているわけです。
ユーザーが売却したクルマは、廃車にならない限り、中古車業者を通して次のユーザーにわたります。
そのような場合、新オーナーがクルマの車両価格とは別に、次のような諸費用を支払います。
種類 | 支払時期 | 前払い額 |
---|---|---|
自動車税 | 車購入時、以降毎年 | 翌年の3月までの分 |
自賠責保険料 | 車の購入時、車検時 | 次回車検までの分 |
リサイクル料金 | 車の購入時のみ | 廃車時に必要な全額 |
お気づきかと思いますが、青色の表と赤色の表で各項目の「前払額」に注目してみると重なっている部分があります。
つまり、クルマの前オーナーは、新オーナーが支払った分が丸ごと重複していますので、クルマの売却時に還付されるはずなのです。
2 車の売却時に還付される税金、保険料、リサイクル料金の額
それでは、具体的にどの程度の額が返還されるのでしょうか。
それぞれ見てみます。
2-1 車の売却時に戻される未経過期間の自動車税
自動車税は、地方自治体が徴収している税金であり、毎年4月1日現在のクルマの所有者に対して、4月から翌年の3月までの1年分が請求されます。
自動車税額は、普通自動車の場合、次のように排気量で決まります。
排気量 | 自動車税額 |
---|---|
1000cc以下 | 25,000円 |
1500cc以下 | 30,500円 |
2000cc以下 | 36,000円 |
2500cc以下 | 43,500円 |
3000cc以下 | 50,000円 |
詳しくはこちらの画像をご覧ください。
売却したクルマの分として還付されるのは、「未経過期間の自動車税」であり、売却月の翌月から翌年3月の期間に相当する額です。
例えば、9月に2000ccのクルマを売却した場合、翌月から翌年3月分までの未経過期間分が返還されます。
36,000円÷12か月×6か月分(10月~翌年3月分)=18,000円
この例では、18,000円が返還されることになります。
ただし、軽自動車の場合は、税額が低く年額という考え方が採用されているため、還付されません。
2-2 車の売却時に戻される未経過期間の自賠責保険料
自賠責保険は、自動車に対して法律で加入することが義務付けられている保険です。
自動車ユーザーが自ら加入する任意保険とは区別するため、強制保険と呼ばれる場合もあります。
自賠責保険料は、新車の購入した際や車検時に、次回の車検までの期間分を一括して前払いする形になっています。
自動車に対する保険であるため、クルマが廃車にならない限り、未経過期間の保険料として保険会社から還付されることはありません。
しかし、クルマ売却後の保険については、新オーナーの名義に書き換えられ、保険料相当額も新オーナーが中古車業者に支払うことになります。
したがって、次回の車検まで期間が残っているクルマを売却する場合には、クルマを買い取った中古車業者から未経過期間の保険料相当額を受け取ることができるのです。
自賠責保険料の金額は、車の種類(普通自動車または軽自動車)と保険期間によって異なります。
以下は、2023年4月1日現在の一部の金額例です。キリの良い期間ではないのは、保険の切れ間を防ぐための配慮です。
普通自動車(自家用乗用車)
25ヵ月……18,160円
37ヵ月……24,190円
軽自動車
25ヵ月……18,040円
37ヵ月……24,010円
詳細はこちらの画像でご確認ください。
普通自動車を新車で購入して2年経過した後で売却することになった場合、未経過期間の保険料として、8千円程度の額が戻ってくる計算です。
2-3 車の売却時に戻されるリサイクル料金
自動車のリサイクル料金は、次の3品目のリサイクルや適正処理に必要な費用として、所有者に支払いが義務づけられているものです。
- シュレッダーダスト(クルマの解体・破砕後に残る廃棄物)
- フロン類(エアコンに必要なガス)
- エアバッグ類
この3品目のリサイクル料金は、車種ごとに異なります。
シュレッダーダストの発生見込みやフロン類の充てん量、エアバッグの個数や取り外しの容易さなどが考慮され、金額が設定されています。
例えば、以下は一部の車種のリサイクル料金(①から③の合計額)の設定です。
車種 | 発売時期 | リサイクル料金 |
---|---|---|
トヨタ・ヤリス | 2020年 | 7,380~9,320円 |
トヨタ・アルファード | 2015年 | 14,770~18,340円 |
ホンダ・シビック | 2021年 | 11,510円 |
マツダ・ロードスター | 2022年 | 10,320円 |
メルセデスベンツ・S400d 4MATIC | 2021年 | 28,680円 |
リサイクル料金は、公益財団法人自動車リサイクル促進センターに車両の再資源化のために預託する金額です。
そのため、リサイクル料金を支払った証明書であるリサイクル券は、「預託証明書」という正式名称になっています。
リサイクル券は、車両と一緒に売買されるので、金銭的な価値を持っています。
そのため、クルマが売買されるときには、車両に付加された「金券」のように扱われているのです。
クルマの売却時には、リサイクル券の存在とその金銭的価値を理解しておくことが重要です。
3 中古車買取店における自動車税、保険料、リサイクル料金の取扱い
中古車買取店での自動車税や保険料、リサイクル料金の取扱いについて、日本自動車購入協会(JPUC)がガイドラインを策定しています。
JPUCは、ガリバー、カーチス、カーセブンなど中古車買取店などが一般消費者への安全・安心なサービスを提供することを目的として設立した一般社団法人です。
JPUCが定めた行動基準によれば、中古車買取店は消費者に対して次のように説明することになっています。
・会員(中古車買取店)は、未経過期間の自賠責保険、自動車税(納付済みの場合)及びリサイクル預託金が売買代金に含まれているか否かについて、消費者に対して明確に説明しなければならない。
実際の中古車の査定では、未経過期間の自動車税と自賠責保険料を車両の買取価格に上乗せされるケースが一般的です。
一方、リサイクル料金については、車両の買取額とは別に上乗せしてくれるケースもあれば、買取価格に含めている業者も存在します。
どちらの場合であっても、中古車買取業者は、一般の消費者に対して、明確に説明しなければならないことになっています。
消費者としては、このような事情を理解し、自身のクルマを売却する際には、説明を受けることが重要です。
これによって、本来還付されるべき税金等を曖昧にしている中古車業者を避けることができます。
4 クルマを売却する際に注意するべき税金、保険料、リサイクル料金の扱い
クルマを売却する際には、未経過期間分の自動車税や保険料、リサイクル料金の扱いに注意することが重要です。
これらの費用を理解していることで、中古車業者との交渉を有利に進める材料にすることができます。
例えば、査定額の内訳を中古車業者に聞いて、自動車税等が含まれていなければ、その分を上乗せするように求めることができます。
このような交渉によって、数万から10万円程度の追加額を得られるかもしれません。
交渉において重要なのは、正確な情報を持っていることです。
査定額の内訳を詳しく聞き、自動車税や保険料、リサイクル料金が含まれているかどうかを確認しましょう。
最後にクルマを売却する際には、複数の中古車業者から査定を受けることをおすすめします。
自動車税等の還付で査定額を上乗せできても、車両本体の査定額が低くては、本末転倒です。
車両本体の査定額を引き上げるためには、複数の中古車業者で競争してもらうことが最も大切です。
これらのことをまとめた記事もありますので、良かったらご覧ください。
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