車売却の心得え④ 愛車をディーラー下取りに出す前に慎重に検討を!

クルマ売却の心得え④ ディーラー下取りに出す前に慎重に検討を!
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「ディーラーの下取り額は、安い」のでしょうか。

実際、ディーラーの下取りは、中古車買取店などと比較して、買取額が低くなる傾向があります。

しかし、例外的に買取額が高くなる場合もありますし、価格以外のメリットもあります。

今回は、車売却の心得え15箇条の④、愛車を「ディーラー下取りに出す前に慎重に検討を!」です。

中古車市場を深堀りした筆者が、実例を交えてディーラー下取りの損得を解説します。

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「車売却の心得え」シリーズの最終回はこちらをご覧ください。

目次

1 ディーラー下取りと下取り査定とは

メーカー系ディーラーの一つであるトヨタカローラ店の外観

ディーラー下取りとは、新車を購入する際に、これまで乗っていたクルマを新車ディーラーに売却し、その売却額を新車の代金の一部に充当してもらうことです。

また、下取り査定とは、その売却額を見積もってもらうためにクルマを評価・査定してもらうことです。

下取り査定をするのは、中古自動車査定士という資格を持った社員です。

中古自動車査定士は、一般財団法人日本自動車査定協会が実施する中古自動車査定士技能検定試験に合格し、協会に登録されることが必要です。

大手ディーラーの社員の多くが取得している資格ですから、新車ディーラーでは、中古自動車査定士が査定基準に従って査定をしていると考えて良いと思います。

2 下取り査定が低額となりやすい理由

中古車査定の資格者が同じの基準で査定しているのに、なぜディーラーによる下取り査定額が低くなってしまうのでしょうか。

主に次の3つの理由によります。

2-1 下取り査定額が低くなる理由①:中古車買取が本来業務ではないため

自動車メーカー系のディーラーとは、どのようの業態なのでしょうか。

簡単に言えば、「新車の販売で新規の顧客を獲得し、その顧客に継続的なメンテナンスや修理などのサービスを提供することで儲けるビジネスモデル」です。

このため、中古車の買取りが営業担当者の売上げノルマの対象にもなっていません。

したがって、ディーラーでは、営業担当者も中古車の買取り(下取り)には熱心ではないのです。

2-2 下取り査定額が低くなる理由②:構造的に高く買い取れないため

中古自動車査定士にできるのは、クルマの内外装の程度やエンジンの状態、修復歴の確認などを基準どおりに行い、点数を付けることです。

その点数によって機械的に査定額が算出されることはありません。

査定額は、査定した点数も参考にしながら、次の要素を参考にして算出されます。

  • イエローブックまたはレッドブックで査定した場合の金額
  • オートオークションで転売する場合の流通相場

ディーラーは、建前上、日本自動車査定協会が毎月発行している中古車価格ガイドブック(通称、イエローブック)などの資料を基に査定額を算出することになっています。

イエローブックは、中古車の市場情報を参考に車種と年式ごとの卸売価格が掲載されています。

発行月の平均的な価格を掲載していることになっていますが、実際には、流通相場より低額な設定になっています。

イエローブック。中古車価格ガイドブック。中古車査定協会が毎月発行しているもの。
日本自動車査定協会が発行するイエローブック

また、有限会社オートガイドが毎月発行している「オートガイド自動車価格月報」(通称、レッドブック)も併用されます。こちらには、車種、年式、グレードの組み合わせごとに「下取価格」「卸売価格」「小売価格」がそれぞれ掲載されています。

有限会社オートガイドが毎月発行しているオートガイド自動車価格月報(レッドブック)の表紙
有限会社オートガイドが毎月発行しているレッドブック

こちらも、実際の流通相場よりも低い価格の設定になっています。

このイエローブックやレッドブックは、毎月1回の発行ですから、リアルタイムの市場動向を反映することができません。

ディーラーの査定の現場で利用される機会が減っているようですが、原則としてはこれらの情報に基づき下取り査定額は決定されているのです。

実際の下取り査定で重視されるのは、中古車をオートオークションで転売する場合の流通相場の額です。

オートオークションは、中古車業者しか出入りのできない中古車の取引市場です。

ディーラーは、オートオークション会場の取引履歴を見て、下取り車と同じ状態の中古車が業者間でどの程度の価格で取引されているかの実績額(これを流通相場といいます。)を確認します。

その流通相場の額を前提に、次のような計算で下取り査定額を算出しています。

下取り査定額 = 流通相場の額 - ディーラーの利益と経費

つまり、ディーラーは、ユーザーのクルマをオートオークションを通じて転売しても利益や経費が確保できるよう下取り額を算定しているのです。

このため、下取り査定額が流通相場と同じ額になることはありませんし、それに近づくことさえありません。

ちなみに、ディーラーが「利益」として確保する額は車両価格の10~30%。「経費」は保管料、整備費用、オートオークション出品費用、陸送費用等として10万円程度です。

このように、ディーラーに下取りでは、ディーラーが必ず利益と経費を得る仕組みですので、構造的に高額とならないと言えるのです。

なお、オートオークションで流通相場が決まる仕組みについては、こちらをご覧ください。

2-3 下取り査定額が低くなる理由③:ライバルがいないため

物品を高く売却したい場合には、その物品を購入したい人を集め、価格を競り上げるオークションを行いますよね。

クルマの売却も同じです。

高く売却したい場合には、オークションとはいかなくても、複数の買取業者に査定額を競り上げてもらう方法が有効です。

しかし、ディーラー下取りでは、ライバルはいません。

新車に買い換える場合、まず最初に、ディーラーで購入予定のクルマの見積りを取るのが一般的です。

新車に買い換えるステップの中で、ディーラーの下取り査定が最も早い段階で行われるわけです。

この段階では、ディーラーにライバルがいないため、ディーラーの査定額が低額になりやすいのです。

3 ディーラー下取りの実例紹介

ここからは、実例をご紹介しましょう。
某新車ディーラーで、SUVの新車の見積りを依頼しました。

そのとき、愛車の下取り査定は、ご覧のとおり245万円でした。

ディーラーの見積書で下取り車の査定額が245万円と確認できる書類
某新車ディーラーの見積書

ちなみに筆者の愛車の条件は次のとおりです。

メーカー:フォルクスワーゲン
車種:ティグアン TDIハイライン
年式:2019年式(3年落ち)
走行距離:22000KM
内外装の程度:良好

同じ時期、この条件のクルマの流通相場を調べたところ、320~330万円でした。

流通相場の調べ方については、こちらをご覧ください。


このSUVの購入は、見送ることとし、愛車を下取りにも出すこともありませんでした。

もし筆者がこの見積書のとおり新車を購入し、愛車のティグアンを下取りに出していたら、このディーラーは、ティグアンをオートオークションに出品することになったでしょう。

そして、おそらくは、320万円程度の金額で転売できたはずです。

この場合、このディーラーは、どの程度の経費と利益を確保したのでしょうか。

推定してみます。

ディーラーの計算(推定)
仕入れ値:245万円
売却(転売)額:320万円
経費:約10万円
(オートオークション出品代、陸送費、保管料、整備料等)
利益:約65万円

もし筆者が見積書どおりに新車を購入した場合、ディーラーは、新車販売の利益のほかに下取り車の転売で65万円も儲けていたということです。

ユーザーは、ディーラーの利益のために愛車を下取りに出すわけではありませんから、下取りに出す前に慎重に検討することが望ましいわけです。

ミツキ

ディーラーの利益の大きさには驚いたわ。でも、ディーラーは査定額が0円の古い車でも引き取ってくれるから頼りになると思うわ。

show(ショウ)

そうとも言い切れないんだよ。アフリカへの輸出市場では、古い中古車でも買い手が付く場合があるし、たとえ廃車寸前の中古車でも、リサイクル業者がそれなりの金額で引き取ってくれるから、結局はディーラーは利益を確保できるとようになっているんだ。

ちなみに、筆者は、愛車のティグアンを330万円で売却することができました。その体験談については、こちらの記事をご覧ください。

4 例外的に中古車の下取り査定額が高くなる場合

このようにディーラーの下取り査定額は、低額になる傾向があるわけですが、例外的に流通相場に近い金額で下取りをしてくれる場合があります。

それは、次の条件をすべて満たしたときです。

  • 下取りに出すディーラーが認定中古車の販売を行っている
  • 下取りするクルマがディーラーの系列メーカーの車種である
  • 下取りするクルマが人気車種、高年式、低走行距離かつ状態が良い

このような条件が満たされれば、下取り車を転売するのではなく、自社の認定中古車として取り扱ってくれる可能性がありますので、高額になりやすいです。

上の条件がそろっている場合には、素直にディーラーの担当者に認定中古車として仕入れるのか、聞いてみると良いと思います。

認定中古車の在庫として仕入れなら、必ずとは言い切れませんが、流通相場の額に近い金額の査定額になることがあります。

5 中古車の下取り査定額が流通相場を大きく超える奇跡のケース

ごく例外的なケースですが、流通相場を超える下取り査定額となる場合もあります。

かなり条件が厳しいので、ある意味で奇跡的なケースと言えますが、具体的には、次のような条件が揃ったときです。

  • ディーラーの決算期である
  • ディーラー店舗に設定された新車販売のノルマの達成が厳しい状況にある
  • 購入予定のクルマの新車登録がディーラーの決算日に間に合う
  • ユーザーが新車の購入を迷っている

このようなケースでは、営業所が背負っている販売台数のノルマを達成するために、新車に大幅な値引きを入れます。

しかし、メーカーやディーラーの本社から値引きの限度額を決められているため、それを越えた値引きができません。

そのようなときに、値引きの限度額を超えた値引きをすれば、顧客が新車を購入してくれるという状況が生じることがあります。

そして、ディーラーは、下取り車の査定額に注目し、査定額を無理にアップすることによって、新車の値引きと同じように顧客の支払う金額を下げてくれるということなのです。

ディーラーの目的は、決算日までの新車の登録ですから、顧客が購入を決断するためなら、何でもするという状況といえます。

当然ですが、ディーラーは下取り車の買取りで利益を確保できません。

それよりもノルマ達成を優先させるということです。

これは特殊なケースですが、ディーラーの決算期を意識して新車へ乗り換えると、このようなケースに巡り会うかもしれません。

こんな場合には、他の売却先を探さずに迷わず下取りに出すべきです。

6 ディーラーとの上手なつきあい方

新車ディーラー(ニッサン)の外観

経済的な余裕のあるユーザーなら、新車を購入したディーラーに、メンテナンスや修理だけでなく、将来の愛車の売却(下取り)まで、すべて任せておくでしょう。

ディーラーは、カーライフサポートのプロですので、ユーザーに面倒に感じることは、お金さえ払えば、解決してくれます。

しかし、コスパを意識するなら、メンテナンスや修理、車検などはカーケア店や街の板金ショップを利用するほうが有利でしょう。

クルマの売却(下取り)も同様です。

クルマの売却に係る手続きや交渉は、ディーラー下取りであれば最小限に済ますことができます。

しかし、売却額の面ではディーラー下取り額は低くなることが多いので、ディーラー下取りに出す前にほかの選択肢を慎重に検討してみることをおすすめします。

ちなみに、筆者は、ほかの売却方法を検討した結果、愛車のティグアンをこちらのサイトから手続きをして330万円で売却しました。某新車ディーラーの見積額245万円と比較すると、その差額は、85万円にもなりました。

この記事のまとめ
ディーラー下取りの査定額は、低くなりやすい。
理由は、次の3つ。
①中古車買取が本来業務ではないため
②構造的に高く買い取れないため
③競争がなく頑張る必要がないため
筆者の経験では、流通相場320万円のクルマがディーラーの査定では、245万円であった。
しかし、系列のクルマを下取りに出す場合など条件がそろえば、高額になる場合もある。決算期には奇跡の査定額になることも。
コスパを意識してクルマを売却するなら、ディーラー下取りに出す前に、ほかの方法の検討した方が得策

★筆者のコメント

中古車市場のことを深掘りして研究する前、筆者はクルマを買い換えるたびに、当然のように愛車をディーラー下取りに出してきました。ディーラーの査定額は、相場どおりなんだろうと勝手に思い込んでいたのです。もし、当時、クルマの上手な売却方法を知っていれば、いくら高く売却できたのか…。怖くて計算したくもありません。

下取りに出したクルマと同程度の中古車の実勢販売価格を調べれば、自分のクルマの価値がある程度わかります。なぜ、そんな簡単なことさえ調べなかったのか不思議です。きっと、ディーラーの担当者と仲良くなってしまい、その担当者を信頼しきっていたのだろうと思います。

人を信頼するのは悪いことではないとはいえ、もっと勉強すればよかったと後悔しています。読者の皆さんがこのような後悔をしなくて済むよう、この記事が参考になれば幸いです。

クルマ売却の心得え④ ディーラー下取りに出す前に慎重に検討を!

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