愛車の買取相場に影響する中古車市場の仕組み 2023年の現状は?

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クルマを売却するときの相場額は、車種や年式、走行距離によって決まると思っていませんか。

もちろん、それらも欠かせませんが、それらと並んで重要なのが中古車市場の動向です。

2023年は、半導体やワイヤーハーネスの不足に加え、円高の影響などに起因して、新車の納期が著しく遅れ、新車の販売台数が大きく減少する状況が続いています。

この影響で、幾分落ち着いてきたとはいえ、中古車市場も相場額が高い水準で維持されてきました。

クルマを売却しようとするユーザーにとって関わりの深い中古車市場について、仕組みと現状を解説します。

目次

1 世界と比較する日本の中古車市場の規模

日本には、世界市場で受け入れられている自動車メーカーが7社あります。トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スズキ、三菱、スバルです。国内市場を中心として展開しているダイハツを加えると8社になります。

このように多種多様なクルマを生産するメーカーが8社もある国は他には存在しませんので、日本は、紛れもなく世界一の自動車大国といえるでしょう。

このような背景もあり、各メーカーの戦略や国の税制面での施策などによって、日本では中古車よりも新車を購入するユーザーが多い状況が続いています。

日本の新車と中古車の販売台数の比較グラフ

このグラフで示された割合は世界標準というわけではありません。

世界の状況と比較すると、日本の自動車販売が新車に偏っていることがわかります。

アメリカ、フランス、ドイツにおける新車と中古車の販売台数の比較円グラフ

このようにアメリカや欧州の国々との比較では、日本の中古車市場は新車の市場に対して小さいといえます。

衝突安全や自動運転技術への対応、原材料費の高騰などの影響によって、新車の販売価格が軒並み上昇しているにもかかわらず、日本の労働者の賃金は上がっていません。

このようなギャップのある状況が続いていますので、新車の販売台数ベスト10(2022年)を見ても、比較的、価格帯の低いクルマがほとんどを占めています。

軽自動車が5台も入っていることが象徴的です。

2022年1-11月 普通乗用車・小型乗用車+軽自動車販売ランキング

1位 ホンダ N-BOX 18万5437台

2位 トヨタ・ヤリス 15万7365台

3位 トヨタ・カローラ 12万0346台

4位 トヨタ・ルーミー 10万1907台

5位 日産ノート 10万1542台

6位 ダイハツ・タント 9万5650台

7位 スズキ・スペーシア 9万0923台

8位 ダイハツ・ムーヴ 8万5088台

9位 トヨタ・ライズ 7万9850台

10位 スズキ・ワゴンR 7万5341台

(引用:モーターファン

クルマの購入時には価格が大きな要素になっていますので、中古車市場は今後ますます注目される可能性があります。

2 中古車市場の仕組みと現状

2-1 市場の仕組み

中古車を含めたクルマの流通の現状を見てみます。生産されたクルマは、新車として市場に出された後、ユーザーの手に渡り、中古車となり流通。最後は、スクラップになるか輸出されます。

この流れをまとめると次のような図になります。

車の流通のチャート図

この図をユーザーの目線で見てみると、新車を購入するユーザーにとっては、新車ディーラーが自動車市場の窓口になります。新車ユーザーは、クルマの売却先としても、下取りとして、ディーラーを選択する場合が多いでしょう。

一方、中古車を購入するユーザーにとっては、中古車業者が自動車市場との唯一の接点です。

このようにユーザーからは見えにくいかもしれませんが、中古車市場において重要な役割を果たしているのは、オートオークションなのです。オートオークションは、新車ディーラー、中古車業者、廃車業者、輸出者などの業者間をつなぐ(いわゆるBtoBの)重要なハブの機能を担っています。

オートオークション会場の様子
オートオークション会場(CAA)

引用:株式会社シーエーエーのウエブサイト「オークションの種類」

オートオークションの詳細については、次の記事にまとめていますので、興味のある方は、ご覧ください。

2-2 中古車市場の規模

日本全体で保有されているクルマの数は、約8200万台※1です。この数字の中には、トラックやバスなど、商業的に使われる車両や二輪車も含まれているので、これらを除いた乗用車のみの台数は、約6100万台※2になります。

では、このような車両数を前提にして、先ほどの図に流通台数の規模を入れてみます。赤字で表示した台数が、2021年の実績をベースとした流通台数です。

※1 正確には82,304,416台(2022年5月末現在の乗用車の保有台数。一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)

※2 正確には、61,935,690台(2022年5月末現在の乗用車の保有台数。一般財団法人自動車検査登録情報協会調べ)

車の流通のチャート図の流通台数入り

この図では、中古車流通の入口である新車販売が422万台であったのに対して、出口であるスクラップと輸出に回った台数が440万台(311万台+129万台)であったことがわかります。

また、ユーザーにはほとんど関りがないので、知らない方が多いかもしれませんが、年間129万台もの中古車が国外へ輸出されているのです。

年間に中古車として販売される台数が約268万台ですので、中古車として買い手が付いた車両のうち、実に3台に1台の割合で輸出されているということになるわけです。

中古車が輸出のため船に乗せられる写真
外国へ輸出される中古車
引用:株式会社ネオトランスのNews

これほど中古車の輸出台数が多いので、輸出車両の価格の動向が中古車の流通相場を決める大きな要素の一つになっています。つまり、輸出先の国々の政策や動向が中古車の相場に影響しているということです。

例えば、トヨタのワンボックスであるアルファードマレーシアで人気の高い車種ですが、マレーシア政府の中古車の政策によって、輸出できるのは、新車登録から59か月(5年落ち)までの車両となっています。

新車登録から5年経過したアルファードは、マレーシアへの輸出の道が絶たれることになります。そのため、このタイミングで相場額が落ちることになるわけです。

このように中古車の流通相場には、海外の政策や動向も大いに影響しているということです。

2-3 中古車市場での主なプレーヤー

中古車市場における主なプレーヤーは次のとおりです。

中古車市場のプレーヤー1: 新車ディーラー

中古車市場で重要な役割を果たしているのが新車ディーラーです。新車ディーラーは、メーカーの系列ごとにチェーン店となっていますが、そのほとんどはメーカーとは別資本の販売会社が運営しています。販売会社がメーカーと特約店契約を交わして、系列メーカーのクルマだけを販売するというビジネスモデルです。

日産の新車ディーラーの店舗

このようなメーカー系のディーラー以外には、サブディーラーといわれる存在もあります。正式には、業者販売店といい、「業販店」と略して呼ばれることが多いです。
サブディーラーの特徴として、どのメーカーの新車でも扱える点が挙げられます。メーカーとの直接の契約がないため、しばりもないわけです。

サブディーラーが販売する車は、メーカー系のディーラーから仕入れますので、割高になるイメージですが、実際にはディーラーがメーカーによる値引きの制限があるのに対して、サブディーラーには、そのような制限がなく、ディーラーよりも値引き額が高い場合もあります。

スズキやダイハツは、他のメーカーに比較して、正規のディーラーよりもサブディーラーによる売上げの比率が高いと言われています。確かに、自動車の整備業や中古車販売業の傍らで新車販売しているサブディーラーには、その2社の看板を掲げている場合が多いようです。

中古車市場のプレーヤー2:中古車業者

中古車業者は、中古車の買取店と販売店とに分かれます。

買取店として有名なのは、ガリバー、ビックモーター、ネクステージ、ラビット、アップルなどの会社です。国道沿いや街中で「高額買取」などの看板を掲げているので、おなじみの店舗だと思います。

一方、中古車販売店は、店頭に中古車を陳列して販売している会社です。比較的中小規模の業者が多く、中には軽自動車専門、外車専門など特定の車種に特化して品揃えをしている販売店もあり、お店ごとに特徴が異なります。

中古車の買取店は、買取専門店という言い方もされていますが、実際は、大手の買取店のほとんどが中古車の販売も行っています。

例えば、ガリバーを運営する株式会社IDOMは、会社が創設された当初は、中古車の買取を専門とする会社でしたが、途中から買い取った中古車の販売も始め、今では中古車販売が主力の事業になっています。

中古車買取店が中古車販売をしている店舗の写真

また、中古車販売店についても、例えばプレステージという会社は、中古車の販売専門の会社としてスタートしましたが、途中から中古車の買取を強化し、今では中古車買取店の大手として台頭しています。

このように買取店と販売店の垣根がなくなってきているのです。

中古車市場のプレーヤー3:中古車輸出業者

年間129万台の中古車を輸出している中古車業者ですが、いわゆる大手といわれているのは、次の3社です。

株式会社ヱスビーティー
株式会社ビィ・フォワード
平和オート株式会社

これらの会社は、必ずしも知名度が高くないかもしれません。ユーザーとの直接の接点がありませんし、シェアを独占するような会社がないことも理由として挙げられるでしょう。

中古車の輸出業は、サラリーマンが副業として行えるとして、各地で起業セミナーなどが開催されているほど、参入のハードルが低いため、乱立している状況です。したがって、全体の事業者数などが統計資料としてまとまっておらず、業者の数や売上高などの市場の全体像が明らかになっていません。

また、中古車輸出業者には、外国人が多く従事しているという特徴もあります。どの事業者も外国のバイヤーからの注文を受けて日本で中古車を仕入れていますが、中間マージンを削るため、外国のバイヤーが直接日本で仕入れた方が効率的なのです。

そして、どの事業者も共通して、仕入れのほとんどをオートオークションに頼っています。バイヤーからの注文台数を納期までに揃えるためには、大量に中古車が出品されるオートオークションで調達するしかないのです。

このため、輸出事業者の仕入れの動向が中古者の相場の形成に大きな役割を果たしています。

ミツキ

意外に中古車が輸出されていることに驚いたわ。海外ではどのような車種に人気があるの?

show(ショウ)

以前であれば、ランクルやパジェロなど悪路走破性が高い車が人気で、ハイブリッド車が敬遠されているなんて言われていたね。でも、今では、特定の車種や年式だけでなく、幅広い車種や年式の中古車が輸出されているんだ。主要な仕向け国であるニュージーランドでは、アクアやプリウスが一番の人気だし、富裕層向けの輸出が多いマレーシアでは、アルファードやハリアーの高年式のものが高値で取引されているよ。発展途上のアフリカ諸国では、年式の古いトヨタ車が人気なんだ。国によって様々で一概には言えなくなっているんだ。

中古車市場のプレーヤー4:スクラップ業者

1年間に使用済みとなった約300万台の中古者がスクラップになっています。

スクラップというと、つぶされて埋め立て処分されるイメージですが、現在はそのような処分の仕方はされていません。

自動車リサイクルのフローチャート
引用:公益財団法人自動車リサイクル促進センター

ディーラーや中古車業者などが「引取業者」となって、ユーザーから使用済みの中古車を預かり、フロン類回収業者や解体業者に引き渡します。引き渡されたクルマは、フロン類を無害化され、再利用可能な部品が回収された後、破砕業者にわたります。

破砕業者がシュレッダーダストにして、さらに再利用される金属や熱源となるウレタンなどを回収されます。

そのようなリサイクルの工程を経てた結果、2020年度の1台あたりの最終処分量は7Kgまで減っているということです(公益社団法人自動車リサイクル推進センター調べ)。

つまり、乗用車総重量である1000~2000Kgの99%以上がリサイクルされているというわけです。

3 中古車市場の将来

大手の中古車業者を中心に、「脱オートオークション」の動きが活発化しています。自社で買い取った中古車を自社の販売網で販売することができれば、オートオークションに関する経費を節約できる上に、在庫の回転を速めるメリットがあります。

また、ガリバーフリマやカババとように、クルマを売りたいユーザーと買いたいユーザーとを直接結び付けるビジネスモデルも盛んになってきています。これも、脱オートオークションの動きと言えるでしょう。

将来的には、このような動きが活発化して、中古車市場の要請が変化することが考えられますが、流通する中古車の規模を考えれば、現状の中古車市場の仕組みが近い将来大きく変わることはないでしょう。

筆者のコメント
オートオークションの最大手であり、市場のシェアの約37%を占める株式会社ユー・エス・エスには、4万8千社の業者が会員登録しています。この中には、中古車販売業者、買取業者、中古車輸出業者、廃車引取業者などの業種が含まれているわけですが、いずれの業種でも中小零細な業者が多数を占めているのが特徴的です。

市場が成熟すると、寡占化(かせんか)と呼ばれる、少数の大手企業が市場を支配する状態となる傾向が現れるものですが、中古車市場にはその兆候が見られません。寡占化には、大手業者に市場の独占を許すというデメリットもありますが、規模の拡大によるスケールメリットによって効率的な事業運営が行われ、ユーザーが購入する商品の価格が低くなるというメリットがあります。

将来、特に中古車販売店の規模が拡大していけば、中古車価格の低下が見込めますが、最大手の株式会社IDOMでも市場の5%程度のシェアですから、寡占化が進むのは、まだ随分と先になると考えられます。

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