「新車販売のカーディーラーでは、主な収益源が新車販売後のアフターサービスです」
このような一節がディーラーの新人向けの研修資料に書かれています。
新車ディーラーの主な収入源は、新車の販売ではなかったのです。
顧客としてディーラーと関わっているユーザーからすると、意外なことではないでしょうか。
新車の販売は、大きな収入源ではありますが、アフターサービスの利用してくれる顧客の獲得のために行っているとも言えるのです。
そのため、中古車の下取りは、単なる付帯サービスに過ぎません。
クルマを買い換えるときに、それまで乗ってきた愛車を売却するなら、価値を認めてくれる相手に売却したいですよね。
ディーラー下取りに出す前に、ディーラーの真実を知っておくと、他の売却方法を検討するきっかけになるかもしれません。
今回は、中古車市場を深掘りし研究しているブロガーが新車ディーラーの収益構造の実態を解説します。
1 新車ディーラーとは
1-1 自動車メーカー系のディーラーの種類
新車ディーラーとは、次のどちらかの会社のことを指します。
- 自動車メーカーの子会社で新車販売を専門に行う会社
- 特定の自動車メーカーと特約店契約を結んだ自動車販売会社
このようなディーラーの店舗を「正規販売店」といいます。
日本には、自動車メーカーごとに系列のディーラーが存在し、約2万店舗あるとされています。
各ディーラーは、自社系列のメーカーの車種のみを取り扱っています。
例えば、トヨタの系列であれば、正規販売店として、トヨタ店やトヨペット店、カローラ店、ネッツ店、そしてトヨタモビリティ店の5種類あります。
しかし、その中で、自動車メーカーであるトヨタ自動車の子会社は、トヨタモビリティ東京だけです(といっても200店舗以上ありますが)。
それ以外のディーラーは、トヨタ自動車とは別資本の会社なのです。
つまり、正規販売店は、店舗の外装、提供されるサービスが同じでも、地域ごとに異なる販売会社が経営しているのです。
ディーラーの担当者から名刺をもらうと、販売会社の正式名称が書いてあります。
例えば、店舗に「静岡トヨタ」と表示されていたとしても、正式名称は、静岡トヨタ自動車株式会社という静岡市駿河区に本社を置く販売会社なのです。
1-2 サブディーラー
新車の販売は、メーカー系のディーラーのほかに、サブディーラーでも行われています。
サブディーラーは、正式には、業者販売店といい、業販店と略して呼ばれることが多いです。
メーカーとの直接の契約がないため、どのメーカーの新車でも扱えるのが特徴です。
サブディーラーは、メーカー系のディーラーから新車を仕入れているため、小売価格が割高になるイメージがあります。
しかし、実際には、新車ディーラーのようにメーカーや本社の方針による値引制限を受けないため、決して割高にはなりません。
むしろ、ディーラーよりも値引き幅が大きい場合が多いのです。
スズキやダイハツを販売するサブディーラーは、正規のディーラーよりもサブディーラーによる売上げの比率が高いと言われています。
確かに、街中で見かけるサブディーラーは、スズキやダイハツ看板を掲げている場合が多いですよね。
3 ディーラーの売上げ構造
ディーラーの売り上げの構造を見てみましょう。
すべてのディーラーが同じではありませんが、一般的な売上高の構成比(1社平均)は次のとおりです。
売上げベースで見た場合、新車販売が比率が高く、事業の柱となっているのがわかります。
それ以外の項目で新車販売に次いで多いのが、中古車に関わる売上げです。
下取りで仕入れた中古車を自社の認定中古車として小売りしたり、業販といって中古車業者に転売したりした売上げです。
具体例でも確認してみます。
プライム市場に上場している東京日産販売株式会社の売上げの構成グラフです。
ディーラーの中でも最大手の一つである日産販売は、中古車の販売を強化している販売会社です。
グラフからも、中古車に関わる収入が多いことがわかります。
それ以外は、上のグラフとほぼ一致しています。
4 ディーラーの収益の構造
次にディーラーの利益の構造をみてみましょう。
次の図は、ディーラーが獲得した粗利の構造です。
粗利とは、売上高から原価を除いた利益のことです。
売上高に対する粗利の割合が粗利率です。
例えば、ディーラーが300万円の新車を販売した場合、車メーカーからの新車の仕入れ額(≒原価)が210万円とすると、粗利率は30%(90÷300)となります。
売上げベースでは新車部門が事業の柱であったディーラーですが、粗利ベースでは、全体の半分をサービス部門が占めていることがわかります。
サービス部門とは、クルマのメンテナンスや修理、点検、そして車検が主な業務内容です。
新車販売が粗利への貢献が少ないのに対して、サービス部門は、売上げが少ないにもかかわらず、利益率が高く、収益に大きく貢献しています。
つまり、メーカー系の新車ディーラーは、新車販売で新規の顧客を獲得し、メンテナンスや修理などのサービスで儲けるビジネスなのです。
したがって、中古車の買取(下取り)はメインの事業ではなく、ディーラーでは関心の高い分野ではないということになります。
ディーラー下取りが高額にならない理由の一つは、中古車の買取が本業ではないからなのです。
ディーラー下取り額が低くなりやすいのも中古車の買取が本業でないことが主な理由になります。
ディーラーには、どの店舗にもサービス部門があり、整備担当者も必ず数人配置されています。
事業の効率を優先して考えれば、サービス部門を各店舗に分散化しない方が有利なはずです。
しかし、サービス部門の売上げを最大化するためには、効率性を犠牲にしてでも各店舗にサービス部門を設置するのが得策なのです。
ディーラーが中古車の買取(下取り)に積極的にならない背景にはこのような理由があったのです。
ディーラーでオイル交換や整備をお願いすると割高なイメージだけど、それでもディーラーにメンテナンスをお願いしている人が多いのかしら。
確かに定期的なメンテナンスはオートバックスなどのカーケア店に任せたり、修理についても板金ショップを使ったりした方が得だよね。ディーラーは、そんな事情を良くわかっているから、新車購入時に3~5年先までのメンテナンス代を前払いしてもらうサービスを導入し、積極的に顧客に売り込んでるんだ。例えばこんな名称のサービスだよ。
・メンテナンスパック(トヨタ)
・メンテプロパック(日産)
・まかせチャオ(ホンダ)
このような商品はメンテナンスをディーラーで囲い込むために導入されているんだ。新車を購入するときには、数万円の支出はあまり気にしない場合が多いからね。
これ以外にも保証期間の延長プランというのもメンテナンスをディーラーにつなぎ止めるための戦略と言えるよね。かなりお得な価格で提供しているのも納得だね。
最後に
ディーラーが中古車の下取りに積極的にならないことは分かりました。それでは、どのような売却方法が正解なのでしょうか。
筆者は、ユーカーパックを使って愛車を売却しました。
ユーカーパックは、ユーザーの車をカーオークションに出品して、買い手と結び付けてくれるサービスです。もちろん無料で利用できます。
初めて使ってみましたが、「なにこれ!気づいている人少ないかも」という感想でした。
業者との交渉が不要で、いわゆる電話ラッシュもないため、ストレスを感じません。
その上、ディーラーの下取り査定で245万円だった愛車が、330万円で売却できました。
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筆者の体験談をこちらの記事にまとめています。
実は、2022年9月以降、中古車の取引価格は次のとおり下落傾向で、売却額も下がっていくことが想定されます。
できるだけ早いタイミングで今乗っているクルマを売却することも検討するべきかもしれません。
クルマの売却先を検討中の方の参考になると幸いです。
この記事のまとめ
- 新車ディーラーの粗利の半分は、サービス部門が占めている。
- そのため、新車ディーラーは、新車販売で新規の顧客を獲得し、メンテナンスや修理などのサービスで儲けるビジネスといえる。
- 中古車の下取りは、付帯サービスに過ぎず、本業ではないため、高額な査定が期待できない。
- 筆者は、ユーカーパックを利用して愛車を売却した。
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